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サッカーブログです。

ハンドについてのよもやま話

試合中にボールが手に当たり、選手が一斉に「ハンド!」と声を上げる、けれども審判は首を振りノーファウルの判定……

サッカーを見ていればよくある場面ですね。
「ハンド」は正式には「ハンドリング」と呼ばれる反則ですが、これが単純な様で実はとってもややこしい。
オフサイドと同じくらい難しいルールだと思います。


ハンドリングの定義がどのように書かれているのか、競技規則(Laws of the Game)を見てみましょう。

原文
「Handles the ball deliberately (except for the goalkeeper within his own penalty area).」

日本語訳
「ボールを意図的に手または腕で扱う。(ゴールキーパーが自分のペナルティエリア内にあるボールを扱う場合をのぞく)。」
ファウル (サッカー) - Wikipedia より

シンプルな文言にある「意図的」という単語。
分かった様で分からない、なんだか掴みどころの無い言葉です。
一体どんな意味があるのでしょうか?



「意図的に」という曖昧な言葉の解釈について、
審判のためのガイドライン(pdfファイル)に詳しく書かれています。

競技規則 ガイドライン 第12条 ファウルと不正行為

ボールを手または腕で扱う

競技者が手または腕を用いて意図的にボールに触れる行為はボールを手で扱う反則である。主審は、この反則を見極めるとき、次のことを考慮しなければならない。

・ボールが手や腕の方向に動いているのではなく、手や腕がボールの方向に動く。
・相手競技者とボールの距離(予期していないボール)。
・手または腕が不必要な位置にある場合は、反則である。
・手に持った衣服やすね当てなどでボールに触れることは、反則とみなされる。
・サッカーシューズやすね当てなどを投げてボールにぶつけることは、反則とみなされる。

(後略) 


ここで実際に起きたハンドリングの判定について見てみましょう。
1998年フランスワールドカップ、イタリア対チリ。
終了間際にPKを決めたイタリアがなんとか引き分けに持ち込んだ試合です。

いやぁー懐かしいですね。ロベルト・バッジォ

ご覧の通り、主審はハンドリングの反則としてイタリアにPKを与えました。
この判定をガイドラインと照らしあわせて詳しく検証してみましょう。

・ボールが手や腕の方向に動いているのではなく、手や腕がボールの方向に動く。
  →守備側の選手の手はボールの方に動いていません。
・相手競技者とボールの距離(予期していないボール)。
  →相手との距離は近く、飛んできたボールに反応できる時間は無かったと思われます。
・手または腕が不必要な位置にある場合は、反則である。
  →腕は体から離れていますが、膝を曲げて前傾姿勢を取った時の自然な位置に有るよう見えます。

そうです。これはハンドリングでは有りません。
ボールは手に確実に当たっていますが反則にはなりません。
この判定について、FIFAは正式に誤審で有ることを認めています。

ところでこの場面でのバッジォのキック。
蹴り方や方向から予測されるボールの軌道は得点を狙うクロスとしては考えにくい。
相手の手を狙って蹴ったのでは?と自分は思っています。
あわよくばファウルの判定をしてくれたら…というイメージだったのかもしれません。


もしハンドリングの定義に「意図的」と入っていなかったら。


極端な例を挙げますが、
相手選手に囲まれた時に手を当ててファールにする。
ペナルティエリア内にいる守備側の選手の腕に向かって思い切りシュートを打つ。
世界的な名手と呼ばれるほどの技術を持った選手達にとっては相手の腕を狙ってボールを当てる事は十分可能でしょう。
しかしそれはサッカーのあるべき姿でしょうか。


もう一度、ハンドリングの定義に戻ります。
「ボールを意図的に手または腕で扱う。」

選手たちにはわさとハンドを狙うようなプレーをして欲しくない。
そのような願いがこの文言には込められていると思います。