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サッカーブログです。

ワールドカップ 日本対セネガル 感想

一度しか試合を見てないので分析ではなく感想です。

  

1試合目にコロンビアに勝ったとはいえ、開始3分で相手が退場する幸運が有ったことが日本の勝ち点3に大きく影響したことは間違いありません。それに対してポーランドに2-1で内容も良く勝ったセネガル。力関係を考えると不利だと考えていたし、負けたとしてもしょうがないかなと思っていました。それよりも興味があったのは11人対11人のフラットな状況で、日本がどれだけの試合を見せられるのかという事でした。

 

日本のボール保持の工夫

キックオフ後の互いに主導権を取り合う展開が終わった頃の10分にセネガルが得点します。クリアミスが重なった事が失点の直接的な原因ですが、技術的なミスというのは確率のゆらぎみたいなもので完全に防ぐ事は難しいのですがから、そこまでとやかく言うことも無いんじゃないですかね。それよりも”ゴールの方向に体を向けている状況でもコーナーキックを避けるようにクリアする”という戦術的な約束事が本当に正しかったのかを議論すべきじゃないでしょうか。

 

日本はボール保持で”Salida Lavolpiana"*1を採用して戦術的な優位性を作っていました。”Salida Lavolpiana”とはCB吉田と昌子の間にボランチの長谷部が落ちて4バックから3バックに変形する動きを指します。3バックになることで、プレスを掛けてくるセネガルの2トップに対して数的優位をとりボール保持を安定させ、この試合をコントロールしていた柴崎がいい状態でボールを受けられる様にする狙いです。この”Salida Lavolpiana”は見事にはまり、セネガルはどうやってボールを奪いに行けば良いのか困っているように見え、しだいにプレスを諦めて、ただ後ろに下がるだけの守備になっていました。

 

日本の得点は柴崎の素晴らしいロングパスから生まれます。相手右サイドバックの裏をついた長友にボールがわたり、乾の巧みなステップから振りの早いシュートが決まりました。副音声の解説で岡田さんがセネガルの右SBは守備として意味のある場所に居ないと指摘していました。裏を狙うプレーは何度も繰り返して行われていたので、日本チームのスカウティングより導き出された、はっきりとした狙い所だったのでしょう。

 

セネガルの不可思議な守備

前半からずっと気になっていたことがあります。それはセネガルの守備です。プレスの的を外されて上手く行かなかったのは確かですが、それにしてもただ後ろに引いてゴール前に人数をかけているだけに見えました。極めつけはセネガルの2トップが勢いよくボールにプレスを掛けていると思ったら、後ろの8人はそのまま動かず日本にあっさりと前進を許している場面です。いわゆる連動せずに攻撃を促すだけの悪い見本のようなプレスでした。舐めてるのか。この時に「この試合十分に勝つチャンスがある」と感じたのを覚えています。

 

 事前に聞いていた情報では、カリスマ性を持ったシセ監督が統率しているセネガルは規律をもったチームであると、そういう風に紹介されていました。それゆえに現実にピッチで見られた前後分断プレスとの整合性が取れず、なぜこの様な事が起きているのか不思議でしかたありませんでした。コロンビアの様にどこか心の中に日本は格下のチームと扱ってこのくらいでOKみたいな気持ちになったと推測してます。けれども日本チームのプレーが何か混乱を呼んだのかもしれません。実際のところ何が起きていたのかは、これから試合分析される方々の話を聞いてみたいです。

 

 

 ・経験値を伴った反発力

試合経過をなぞって行くと、後半開始から日本が押し気味に進め、乾のポスト直撃のシュートなどチャンスも生まれます。ですが、セネガルが攻撃に力をかけた途端に得点。日本は選手交代を使い反発を見せて同点になり試合は終わります。

 

突然ですが、対戦競技において勝つために必要な事は何でしょう。 

答えは「この相手には勝てないと相手に思わせる事。」これは全く個人的な考えなのですが。苦手意識を持たせるとか、名前負けさせるとかそんなイメージです。負けた側がいったんこの心理におちいってしまうと、その後の対戦でも尾を引き、覆すのは大変な作業になります。心理面の優位性は勝負事の大事な要素です。

 

 閑話休題

心理面でいうと日本の選手達は、相手は強くて早いけれども必要以上に怖がらないという良い精神状態で試合に臨めていたように見えます。十分に勝負できる相手という意識、自信があったから2度追いつくことが出来たんじゃないでしょうか。(戦術とかはまた別の話)

 

言うまでもありませんがこの試合に起用された選手はほとんどが欧州の1部リーグでスタメン、もしくはスタメンに近い立場に居た選手で、彼らはトップ中のトップを相手に試合をすることも日常になっています。セネガルにもマネやクリバリといったCLに出るような選手がいましたが、それもきっと想定の範囲内で、いつもと変わらない相手なのかもしれません。日本の選手達が海外の選手に名前負けしなくなっているのに頼もしさもあり、ここまで来たんだなと感慨深いものもあります。ただワールドカップの舞台で海外経験の重要さをここまで明らかに示すと、海外組の優先度というのはこれまで以上にあがるでしょうね。仕方の無いことですけど。

 

 ・突貫工事は成功したのか

 ここまで2戦して1勝1分。対戦相手を考えるとほぼ最高級の結果となっています。2ヶ月でチームを形にした選手、スタッフの土壇場での調整力は素晴らしいのですが、自分にはやはり突貫工事で組み立てた脆さを持つ構造体に見えるのです。

 

1戦目、2戦目ともに同じスタメンで、交代選手もほぼ同じでした。この事から、スタメン11人の組み合わせ+αを見つけるだけで精一杯だったというのが実情なのでは無いでしょうか。一つ目の形は変えられず、崩れるともうダメという脆さを感じます。特に乾と原口の驚異的な運動量でどうにか守備をもたせている節があるので、3戦目、それ以降の試合で同じような強度が出せるのかは不安材料です。けれどもそのような状態にもかかわらず勝ち点を取っています。

 

話を蒸し返してしまうのですが、もしチームとして練り上げられて、いくつもの選択肢を持つ状態で大会にのぞんでいれば、ベスト16、それ以上の成績も夢でもなかったのでは無いのかなと、どうしてもそう思わざるを得ないのです。

 

そうは言っても監督交代がなければ、相手の油断やスカウティングミスを誘う事もなかったかも知れませんし、どの選択肢を選んでいたらどんな結果が待っていたのかなんて、どこまで行っても仮定の話にしかなりませんし、今はただ見守るしかないですね。 

   

*1:日本語では適切な用語がないのでそのまま使っています。