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サッカーブログです。

チーム分析 京都サンガ編

◆はじめに
チームを分析するにあたり基礎になる考え方があります。
サッカーは明確に攻守が分かれているわけでは無く、11人対11人がそれぞれどのように動くかの自由が与えられているために”複雑系”と表現されるスポーツです。カオスのなかでチームがどのようなコンセプトを持ち戦略をたて試合に臨んでいるのか。それを分析するために試合を4つの局面に分ける手法が使われています。

・攻撃(ボール保持)
・攻撃から守備への切り替え
・守備(非ボール保持)
・守備がら攻撃への切り替え
4つの局面は移行する順番が決まっていて、一つ飛ばしにしたり逆方向に遷移することはありません。
個々の局面においてチームがどのような振る舞いをしているのかを調べて組み合わせることでチームの全体像を浮かび上がらせる事が可能になります。

今回分析の対象としたのは京都サンガFCです。選手やチームの特徴を把握しているので分析もしやすいだろうという考えからです。
起用された選手、対戦相手との力量差、フォーメーションのかみ合わせなどはもちろん考慮しますが、チーム分析の目的はあくまで京都というチームがそれぞれの局面でどうふるまっているかを明らかにすることです。試合分析をするわけでは無いので対戦相手に焦点を当てたり勝敗に関係する得点失点の解説ではないということです。

分析対象にした試合は4試合で、フォーメーションは次のとおりです。
 
 
シーズン開幕して数試合ということでチームが固まっておらず選手の入れ替えやフォーメーションの変更などがありますが、基本は4バックで1トップか2トップのどちらかを採用するようです。
全体的な印象としては選手個々に見るべきものはありますが組織としては攻守両面において課題があり、改善の余地があるチームでしょう。


以下、攻撃、守備、攻撃から守備への切り替え、守備から攻撃への切り替えの4局面に加えて、試合の結果に直結するセットプレーにおいてチームがどのような振る舞いをしているのかを見ていきましょう。


◆攻撃 〜ポゼッション指向とその完成度〜
まず攻撃の方針としては大まかに分けると2種類になります。短いパスを中心に後方からボールをつないでいくポゼッション指向と、早いタイミングでロングボールを前方に送り相手陣内でプレーすることを目指すダイレクト指向があります。京都が採用しているのはポゼッション指向です。これは次の画像をみるとすぐに分かります。


ゴールキックの場面ですがCBの2人が大きく広がりペナルティエリアの横に位置しています。そしてボランチの1人が下がりゴールキーパーを含めた4人でひし形を作っていることが見て取れます。ひし形を作る事でパスコースを確保しボールをつないで前進していこうという狙いです。開幕戦の開始1分という時間帯の場面ということで、まずチームで低い位置からボールをつないでいこう、ボール保持の時間を増やそうというチーム(指揮官)の意図が表現されています。
ただし何が何でもキーパーからボールをつなごうとする訳ではありません。ビルドアップを阻止しようと相手FWが近くまで寄ってくる素振りを見せたときには、ボールを奪われるリスクを考えてゴールキックに切り替えています。それでもやはり優先度が高いのは短くボールをつないでいくプレーで、分析対象とした4試合のどの試合でも見られた傾向です。

ポゼッション指向はDFラインからのビルドアップの工夫にも表されています。
京都の基本フォーメーションは4−1−4−1、4−4−2ですがボールを持ったときには形を変えてビルドアップを行います。具体的に言うと中盤から1人センターバックの位置まで下がり3バックを作り、そしてサイドバックの選手を高い位置に押し上げる事で3−4−3(または3−1−4−2)の形に変化させます。3バックに変化することで相手のフォワード(主に2トップ)に対して数的優位を作り、フリーの状態で前に進み攻撃の起点となることができます。

ビルドアップ from tomex on Vimeo.

動画ではそれぞれDFラインに降りる選手が異なっていますが3バックを作ることは共通しています。この動きから選手個人の判断ではなくチームの約束事として決められた動きであるのが想像できます。主に宮城は中央、仙頭と望月は左に移動しますが、これはおそらく左右の選手が起点となりやすいのでパスの出し手としての能力を考慮した配置でしょう。

3バックの左右が攻撃の起点となるため攻撃はサイドの選手が中心になります。3−4−3に変形した場合を例にあげると、センターバックボランチウイングバック、ウイングの4人の選手が1つのグループいわゆる「サイド・チェーン」となり連携することにより突破を狙っています。けれども今の段階ではこの「サイド・チェーン」は上手く機能していません。狭いスペースでのプレーを苦手としている個人の技術的な問題や相手を引きつけてスペースを開けるといった戦術的な動きに対する課題もあり、ボールを上手く進められず奪われてしまう場面も散見され、また相手ペナルティエリア付近まで進めたとしても、マークを外せずにコーナーフラッグ付近からの可能性の低いクロスを上げて攻撃が終わることも多いです。先に述べた様に京都は攻撃でポゼッション指向をとるならば、サイドチェーンを使った攻撃の精度を高めることは必須事項になるでしょう。

全体のボールの動かした方で言うと、センターバックボランチフォワードという風に中央を縦にパスをつないでいくことはほとんどしません。Uの字の様に相手の守備陣形の外側を迂回するようにボールは動いてきます。相手の守備の間を通す縦パスを狙わないことですが、単純にパスを出して守備の中間ポジションで受ける技術が無いという技術的な理由なのか、ボール保持でフォーメーションを変形させる事から縦パスを奪われたときのリスクを嫌うという戦術的な理由からなのか、どちらの理由なのかは今の所わかりません。

相手の守備の目先を変えるためにセンターバックから直接フォワードにロングボールを当てることもあります。これも今の所あまり効果のあるプレーになっていません。ターゲットになっているのは大野(184cm)とレンゾロペス(190cm)という背の高い選手ではありますが、二人ともに相手を背負いながらのポストプレーを苦手としているようでボールをキープし味方につなげられる場面はほとんどありません。試合を重ねる毎に縦に急ぐロングボールが増えている印象があるのですが、選手の特徴を踏まえての選択なのかは疑問に思う所です。

選手の特徴にフォーカスすると京都にはスピードのあるドリブラーが複数います。小屋松、湯沢、岩崎で、これに石櫃も含めてよいかもしれません。これらの選手の特徴を生かすという点ではまだ不十分です。彼らは1対1の場面では高い確率で突破してチャンスを作れる選手です。彼らが勝負できる場面をチームで作る狙いが見られないのは残念に感じます。具体的に言うと積極的なサイドチェンジがほとんど無い事です。サイドチェーンを使った攻撃では片方のサイドだけを使って突破しようとします。その時に相手も片方のサイドに寄せられています。その状況で逆サイドには前述したサイドアタッカー達が勝負できるスペースがあるはずなのですがそれを有効に使おうとする意図は今の所見られません。サイドチェンジを行える選手がいないので選択肢から外している可能性はありますが今後チャレンジする価値のあるプレーです。

京都の試合運びの特徴ですが後半になると攻勢を強め押し込むという展開が続いています。京都の選手はフィジカル能力、特に走力、持久力に優れた選手が多く、中でも岩崎、小屋松、重廣、石櫃あたりは90分通してスプリントを繰り返せる極めて走力に長けた選手達です。そのために後半になると体力で優勢に立ち、相手を押し込み続ける事が可能なのでしょう。要は京都にはフィジカル能力の高い選手が揃っているという事です。これから良くなる余地は十分にあると考えられます。


◆守備 〜プレスの選択〜
守備方法を3つにわけてハイプレス、ミドルプレス、守備ブロックとします。
ハイプレスとは相手センターバックに対してプレスを掛けて高い位置からボール奪取を狙う最も積極的な守備です。次にミドルプレスはセンターバックからサイドバックボランチなどに出されたパスをスイッチとして狙いを付けてプレスを行う方法です。そして最後の守備ブロックは相手にプレスを掛けるというよりもスペースを消すために守備陣形を整える事を目的とし相手が侵入した来た所を囲んでボールを奪う守備方法になります。

京都の守備方法を見ると前半後半の開始5分から10分あたりまではハイプレスを行います。これはゲームの主導権を握るために行われるプレスです。したがって時間の経過と共に守備方法を切り替えて試合の大半はミドルプレスか守備ブロックの形をとります。ミドルプレスを始める場所はセンターサークルにかかる辺りで、それほど高い位置からプレスを掛け始める訳ではありません。守備ブロックを作る守り方との差はそれほど違いは見られません。

守備では基準をスペースにするか人につくのかどちらかになるのですが正直な所、京都の守備はどちらを指向しているのかはっきりしませんでした。そのためにチームの守備として一体感に乏しく良い守備であるとは言い難いです。特にフォワードからディフェンスラインまで間延びしがちでコンパクトさに欠けていることが守備の問題を引き起こす大きな原因になっているように感じます。

フォーメーションが4−1−4−1の場合でもミドルプレスを掛ける時には4−4−2の形になります。

4141プレス from tomex on Vimeo.

5人の中盤から1人が前に出て1トップと同じ位置まで上がりプレスを掛けます。前にでるのは主にインサイドハーフの役割なのですが前に出て出来たスペースをアンカーの宮城が埋めることによって中盤4人のラインを保つようにしています。
実はこの4−1−4−1から4−4−2に変化しながらプレスを掛けるやり方はイタリアの強豪ナポリも同じ様な動きをしています。

Positional defence from RunTheShow on Vimeo.

ナポリと京都が同じと書いていますが、京都がコピーした訳ではなく4−1−4−1フォーメーションを取るチームがプレスを掛ける時によく使われる形ということです。

京都のメインの守備方法であるミドルプレスについての話になっていくのですが、今の段階ではそれほど洗練されてはいない様です。相手の選択肢を狭めて攻撃を制御したりボールを奪い取ったりという場面が少ないという事です。

少し話がずれてしまいますが、プレスを掛けるとは何をすることなのでしょう?ただ相手にすばやく近寄るだけでは不十分です。相手の選択肢を正確に消すことが重要です。パスを受ける選手にマークに付く、パスコースそのものを塞ぐ、ボール保持者がプレーするスペースを消してしまうと言った具合です。そうして相手の動きを封じ込めてボールを奪います。これらのポイントを抑えるためには個人では難しく、複数人で意思統一した連動した動きが必要になってきます。

それでは京都がミドルプレスを仕掛けている場面を見てみましょう。

ミドルプレスのミス from tomex on Vimeo.

あえてミドルプレスをミスした場面を挙げていますが、この場面では京都の守備の問題点がよく現れています。
ミドルプレスを掛けるきっかけとなる最前線の2人の選手ですが、どうも相手にすばやく寄せる事を優先しているようでパスコースを消すことが出来ていません。そのために相手の攻撃を妨害するどころかセンターバックからボランチへのパスを促す事になっています。その後ボールを運ばれ最終的にはクロスを上げられる事になるのですが京都の中盤の選手と最終ライン、4−4の間に大きくスペースが開いています。このために相手に前を簡単に向かれて守備は後手後手の対応となってしまっています。ピンチを招いたのは前線の選手がプレスを掛けようとして失敗しているのが最初のきっかけなのですが、その他の選手が連動して動いていないことも状況を悪化させて原因です。京都のミドルプレスではこの様なミスが多く改善すべきポイントです。先に紹介しているナポリと京都を比較すれば違いが分かりますが、プレスを成功させるためには全体のコンパクトさを保つ事が重要です。

コンパクトさが保てていないのはセンターバックの特徴から来ています。センターバックの2人ともにスピードのある選手では無く裏を取られるのを警戒するため、相手との間合いを開けたポジションを取りがちです。そのためにDFラインは下がり、中盤の選手との間が開いてしまいコンパクトな陣形を保てていません。ただDFラインが下がる事ではなく間延びしていることが問題です。DFラインが下がるのにあわせて中盤と前線の選手も下がることでコンパクトさは保てるはずです。現状ではチームで統一した狙いを持っておらず、前の選手はプレスに行く、後ろの選手は間合いを開けたいと逆の動きをしてしまっているように見えます。

後方の選手がついてこない守備 from tomex on Vimeo.

中盤の選手はボールを奪い返そうとしていますがDFラインの選手が押し上げず、結果的に相手にスペースで前を向かれてピンチになっています。このように全体のコンパクトさを欠けた陣形が修正されなければ、これ以降の試合でも難しい場面を作られ続けるでしょう。

陣形が間延びしていると指摘しましたがこれはミドルプレスだけではなく守備ブロックを敷いた場合にも問題を起こしています。中盤とDFラインとの間にスペースが出来ていることで、相手選手が中間ポジションでボールを受けた時に簡単に前を向かれてしまいます。縦パスを防ぐためにセンターバックが前に出て防ぐという動きもほとんど行わないために中盤を通過するパスを出されるとほぼピンチになるという状況です。

DFラインの前で簡単にボールを受けられてしまう問題に対して、おそらく対処するために新潟戦、岐阜戦あたりからは中盤の選手は4人とアンカーの組み合わせではなく5人が一列に並び縦パスのコースをふさぐ守備ブロックを形成しています。ショートパスをつないでくる岐阜に対してはこの守備方法は上手く行っていました。今後この形をアレンジして対応出来るのかが当面の課題になるでしょうか。

もう一つ京都の守備で興味深い動きがありました。興味深いとはこれまでにあまり見たことが無いということです。
 
2つ画像を用意しました。左右の違いはありますがサイドバックの選手がDFラインから離れて相手選手にマンマークを行っています。最初は選手の資質から来ている動きなのかと思いましたが分析したどの試合にでも見られた動きなのでチームからのオーダーでしょう。マンマークに付かせている理由として考えられるのは守備ラインの間で縦パスを受けられるのを嫌っているのだと思います。それでも少々極端な守備方法に思います。サイドバック一人だけを前に出すのではなくDFライン全体を同じ様に高くするのがセオリーでは無いでしょうか。

マンマークの守備とは人にずっと付いて来るという性質を逆に相手に利用されてしまう可能性があります。攻撃側の選手の動きによってマンマークについた選手を移動させる事ができます。この性質を利用してきたチームが2戦目の福岡で、サイドハーフの選手が内側に絞りながら後ろに下がることでサイドバックの釣り出し、その空いたスペースをサイドバックが突くというシンプルな戦術で京都の守備を攻略していました。サイドバックに攻撃が得意な選手がいるという条件付きの福岡の戦術でしたが、これから対戦する相手にも同じ様にマンマークを利用した攻撃を受ける可能性は十分に考えられます。


◆攻から守への切り替え 〜はっきりとした課題〜
攻撃から守備への切り替え、つまりボールを失った時に起こす行動としては大きく2つに分かれます。失った瞬間にすぐさまボールを奪い返しにかかるカウンタープレスと自陣の守備を固めるために行う撤退守備です。京都では撤退守備に重きを置いているように思われます。

守備のパートでも触れていますがセンターバックにスピードが欠けているために相手と間合いを離しがちで、守備への切り替えの局面でさらにその傾向が強調されているように思います。DFラインが押し上げることが出来ないためにカウンタープレスを仕掛けられないという消極的な理由から撤退守備を選択しているのかもしれません。

守備ラインの間の隙 from tomex on Vimeo.

前線から最終ラインまで距離が開いてしまっていることは守備への切り替えの場面で問題を起こします。動画では守備へ切り替わった瞬間にDFラインの前方にあるスペースを利用されてゴール前まで一気に攻められてしまっている場面です。

また時にはカウンタープレスを掛ける場面もあるのですが、チーム全体としていつカウンタープレスを掛けるのかがはっきりしていないように見受けられます。

カウンタープレスミス from tomex on Vimeo.

この場面では一人二人とボールを奪い返そうとカウンタープレスを仕掛けていますが、チーム全体として奪いに掛かる動きが出来ておらず逆に相手の前進を許して失点につながりました。このように連動していないプレスの事をネガティブな意味を込めて個人的には五月雨式プレスと呼んでいます。五月雨式プレスが危険なのはプレスを掛けることによって相手の攻撃を促すことにつながるからです。プレスを掛けることで自陣にスペースが出来て、それをあわてて塞ごうとしてまた別のスペースが空き・・とまるで時代劇の殺陣の様に斬られるために前に出ていっているかのようです。チームで連動したプレスを行わずに闇雲にボールを奪いに行くことがどれだけ危険な事がおわかりいただけるかと思います。



◆守から攻への切り替え 〜機動力を生かしたカウンター〜
攻撃への切り替えでは主に事前に高い位置を取っているウイングの小屋松、岩崎(もしくは湯沢)を使い、単騎突破による陣地回復を行います。それでも序盤の試合ではボールを奪っても相手のカウンタープレスを受けてしまい、逃げのボールをフォワードに当ててそのまま奪われていまうケースが多発していました。

流れが変わったのはインサイドハーフに重廣が入ってからで、この大卒新人の選手は攻守に渡ってボールに絡む動きが多くカウンターにも前に飛び出せる選手です。
中盤から飛び出せる選手が増えたことで人数を欠けたカウンターを仕掛けることが出来るようになってチャンスを何度も作り、岐阜戦では狙い通りとも言えるゴールも決めています。

人数をかけたカウンター from tomex on Vimeo.

小屋松、岩崎、重廣、湯沢、石櫃といった京都には走力と持久力に優れた選手が多いので、相手に対応させる時間を与えないカウンターは非常に有効であると言えるでしょう。現状ではセットプレーを除くと最も得点の可能性の高いプレーです。

守備のパートでプレッシングが上手く行っていないことを述べてきましたが、プレスを成功させる回数を増やせばそれはそのままカウンターを仕掛ける回数も増えることになります。守備を改善することが得点力の向上にもつながっていくはずです。


◆セットプレー 〜弱点であることは明確〜
セットプレーの守り方としてはマンツーマンとゾーンの2通りの守備方法があります。
マンツーマンはマークにつく相手選手をはっきりさせることができますが、スクリーン(味方を使って相手の進路を妨害する)をかけてマークを外すといったマンマーク自体の特性を相手に利用されたり、そもそも1対1で負けてしまうと防ぎようが無いといったリスクもあります。
一方ゾーンでは人数をかけて危険なスペースを消すことができますが、いったん守備側の人と人の間に入り込まれた場合に弱さを見せます。加えて、弾き返したボールを拾われたりショートコーナーを使われた場合に守備側の誰が誰をマークするのか曖昧になるという弱点があります。2つの守備方法にはそれぞれ一長一短あり、どちらが優れた守備方法なのかという答えは簡単にはだせません。ただ守備方法による弱点を消すことがセットプレーの守備では重要でしょう。

コーナキックまたはサイドからのFKの場面では、京都はゴール前に一列に人を並べてゾーンで守る方法を取ります。
4試合中セットプレーから3失点しており、残念ながらあまり上手く行っているとは言えない状況です。

セットプレイ from tomex on Vimeo.

失点シーン意外にでも、ゾーンで守っている外側から走り込まれて前に入られて触られているケースが多発しています。またいったんボールを動かされると選手がボールだけを見てしまい、マークを見失ってシュートを打たれる事もあります。ボールウオッチャーになってしまうのは何もセットプレーだけでなく、通常のクロスを上げられた時にも見られる傾向があり、失点を減らすためには修正を図らなければならないポイントでしょう。

一方、セットプレーの攻撃側になった時を見てみると、ニアサイドを使ったりペナルティーエリア外の選手を使ってミドルシュートを狙ったりというプレーはありますが、おおよそはゴール前に早いクロスを上げて高さを使うというシンプルな方法を取っています。京都には特にヘディングに強い闘莉王を始めレンゾロペス、染谷、宮城、大野らの180cmを超える選手を揃えており、さらに背は高くないものの抜群の高さを持つ本多も居ます。高さに強い選手が多いため奇をてらった攻撃をしなくても十分に得点を狙えるだろうという目論見なのでしょう。

攻守ともに京都はあまりセットプレーに力を入れていないように見えます。セットプレーは全体の得点の3割とよく言われていますが残り7割を重視するのはどのチームでもよくある話です。

◆まとめ
ゲームの4局面とセットプレーについて、京都サンガのチーム分析をしてきました。チーム分析とは簡単に言ってしまうと、対象のチームをどうすればやっつけられるか?という事です。自分がもし対戦相手の立場に経つとどういう指示を出すかを書き出してみます。

・京都の攻撃はサイドチェーンが主体でサイドチェンジの狙いも持っていないため、全体の陣形は横に圧縮をかけてサイドバックがボールを持った瞬間を狙ってプレスを掛ける。
・京都のDFラインは下がりがちで特に守備への切り替えでスペースを開ける。ボールを奪った後にはサイドではなく中央の京都の中盤と最終ラインの間でボールを受けることを狙う。
・京都がミドルプレスを仕掛けて来ても慌てずにパスコースを探すこと。後ろの選手の押し上げは無いので、一度プレスをかわしてしまえば即チャンスにつながる。
・京都のセンターバックは高さに強さを見せる半面スピードに掛けるのでロングボールを使う時には当てるイメージではなく背後のスペースを狙う。
・京都のサイドバックは人に食いつく傾向があるのでポジションチェンジを多用して、サイドバックの開けたスペースを狙いたい。
・セットプレーは大きなチャンス。ボールを動かしたりクリアボールを拾った2次攻撃で動き直しを行い守備のずれを狙う。
・反対に京都が仕掛けるセットプレーには威力がある。ペナルティーエリア付近でのファールはなるべく避けたい。
・京都の攻撃で最も警戒するべきは高い位置で奪ったカウンターのため、低い位置でのボールロストは厳禁。極端に言うと自分たちでボールを持たず、相手にボールをもたせる時間を増やしてしまっても良いかも知れない。
・京都のサイドアタッカーにはスピードとドリブル技術があるために1対1ではなかなか止められない。チャレンジ&カバーを徹底すること。

これら上げてきたポイントを反転させればそれは京都が改善すべき余地であると言えるでしょう。まだシーズン開幕して4試合の時点での話ですから、これからチームとして狙いを明確にして完成度を高めていけば良い、それだけの話しです。